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2006年11月26日 (日)

小説 新昆類 (20) 【第1回日経小説大賞第1次予選落選】

 処女作・精神現象学においてヘーゲルは、変化するものへのダイナミックな人間の精神
運動を弁証法的神学として思弁化していった。それはやがて北方ゲルマン民族によるプロ
イセン国家形成のイデオローグとしておのれの立場を固める。

 マルチン・ルターによる宗教戦争は神学への幻滅と荒廃を民衆にあたえた。ヘーゲルは
イエナにおいてフランス革命とナポレオンの進軍に衝撃をうけ、哲学によって世界をつく
った。哲学史は自分によって総括され、みごとな円環を閉じた、とされドイツ神学を復興
させたのである。ヘーゲルの内部はドイツの動物的本能である自己遺伝子と模倣子に回収
され、世界精神を語りながら、ドイツ民族と国家神学に閉じ込められた。

 アングロサクソンのイギリスやフランスにおけるブルジョア革命、近代「国民国家」の
登場として、ヨーロッパに革命的に表出したナポレオンの戦争。その反動としてもたらさ
れたドイツ民族意識。ドイツは宗教としてのイデオロギー戦争を「農民戦争」として国土
が荒廃するまで長時間・徹底的に戦いぬいてきた。経済・産業・国家統一などはくそくら
えで、イデオロギー(カトリックかそれとも宗教革命としてのプロテスタントか)の勝敗
が重要だった。こうして幾つもの村が消滅した。それが他者としてのナポレオンに領道さ
れた史上はじめての国民軍との激突によって、おのれ自身を知る。

 ドイツには宗教戦争を通してダイナミックな人間の精神運動としてあるイデオロギー哲
学が観念上に形成された。観念とは民族言語によって形成される内面・深層であり、詩人
と思想者の王国が、やがて「土と血」のファシズムに全面組織された理由がここにある。
ドイツ観念哲学はドイツ民族言語の歴史的ゲバルト内戦によって形成されてきた。
 人間の内面は民族言語によるところの神学・思いこみとしての観念、そしておそるべき
人間関係がもたらす精神的受動と攻撃、家族という制度からはじまり地域・国家それら制
度上の表層に出現する交通関係の衝突作用によって生成する。人間関係の悲しみと喜びを
民族言語によって現出されるのが文学。

 共同体構成員の感受性がダイレクトに構成として表現され、それが共同体の多数者の心
に共鳴すれば、その詩と小説は民族文学に上昇する。近代国民国家が形成されていれば国
民文学となる。

 近代世界市場が形成されていれば、他民族言語に翻訳され他者の思考と精神にとどく。
だがそのとき化学変化がおきる。内面を放出したかにみえた民族の文学は翻訳されると同
時に異化され相対化され表層へと転化する。

 ヘーゲルが生きていた時代はすでに世界市場が形成されていた。文学は人間の感情・情
・情念として線・関係を物語る人物を現出するが、哲学はひたすら思考技術として洞察を
先行させる「人間とはどこからきて、どこへいくのか?」命題を表層へと上昇させる、そ
のために下向への道をあるく。

 ヘーゲルはヨーロッパ哲学を総括し哲学的歴史はヘーゲルによって円環が閉じられ、自
己完結したといわれている。哲学史の宗教改革マルチン・ルターであらんとしたヘーゲル
は他者としとのユダヤ思想・ギリシア哲学・イギリス・フランス哲学をひとつの宗教改革、
イデオロギー戦争として、ドイツ「土と血」民族言語内部にとりこんでいった。それが神
学の自己完結である。「土と血」はナチスのスローガン。

 老化するにしたがってヘーゲルは人間の出来事が現出する変化するものへの恐怖により、
彼の情念は世界精神の自己絶対化のうえに、おのれの体系たる哲学史の円環を閉じ、哲学
史をおのれの言語によって終わらせようとした。それはフランス革命とナポレオンによる
近代国民の登場による世界市場への恐怖といってもよい。

 表層に恐怖するものは、おのれの幻想・観念としての内部と深層に閉じこもる。そして
ヘーゲルの世界精神とは、やがて自分たち北方ゲルマン民族が世界の真理を体現するとい
う第三ローマ帝国への渇望である。こうしてドイツ観念哲学は、旧約聖書以来の神の時間
を体現するユダヤ人を抹殺し、第三帝国というドイツを中心としたローマ帝国の再現をヨ
ーロッパに建設するという、ヨーロッパ最終解決に向けて暴走したナチズムのイデオロギ
ーと連結する。日本の「土と血」は天皇制であった。ファシズムとはやはり地主たちの運
動であり、土(郷土)から工場に追われ血(家族から引き離された)労働者の復讐の情念
がゲバルトとなった。擬似郷土と擬似家族の頂点として最大地主天皇はいた。明治政権と
は勝利者による土地の占有である。ほとんどの森林は天皇と明治官僚たちの私有財産であ
った。「土と血」をめぐる民族浄化はユーゴスラビア内戦においてもあらわれたのだが、
日本ファシズムを現出させた日本イデオロギーはいまだ解明されていない。

 民族言語の内部・深層・観念・思いこみが交通関係の表層としてある世界市場の再分割
と支配に挑戦したとき強暴になるのはただ神学による。イタリア・ポルトガルスペイン・
オランダ・イギリス・フランスの国々が、海洋貿易、あるいは大航海時代によるアフリカ、
南北アメリカ大陸を植民地分割し、植民地から収奪した富で、本国の産業と商業を成長発
展させていた時期、ドイツは宗教改革の火花を起こして以来、農民戦争という宗教戦争、
イデオロギー闘争によって、荒廃と貧困のなかで観念哲学の体系の基礎工事をしていた。
ドイツ思考の徹底さは合理主義を生み、戦略的部品としての機械を現出する。ドイツの鉄
と機械はすぐれている。機械とは人間が空間に形成するもうひとつの設計思想による構築
力にちがいない。

 ドイツ思考の徹底さを継承したマルクスは、ドイツを追放されることによりパリに移住
し、そこでフランス革命運動、社会主義運動という他者との出会いによって、ドイツ言語
の内部に閉じこもっていたヘーゲル哲学と対決し、ドイツ観念哲学に対し戦闘を開始する。
そこでマルクスは革命運動と哲学の担い手である労働者階級を発見する。知識人とは民族
言語の内部である国家神学に閉じ込められている。その観念と思いこみのおかしさを彼ら
はしらない。

 これに対し賃金奴隷としてある労働者階級は、徹底して表層に生きている。その労働は
資本主義の歴史的空間と世界市場の数字である前衛に結合している。彼らの内部にはなに
か観念・思いこみといった深淵な神学がによって生活しているのではない。彼らは徹底し
て表層としての数字に全面的に規定され制約され、工場制度に従属し、その沈黙の労働は
金属機械と格闘し、集団的協働として生産する。独我的な思いこみの労働は機械にまきこ
まれ死を意味する。工場制度での生産は、観念哲学・神学・新約聖書が自然に動かしてい
るのではない。具体的・現実的な労働とは、社会的関係としての人間たちが数字といった
貨幣に縛られ生産しているのである。観念ではなく数字に毎秒追われ行く人間こそ労働者
である。

 私有され特権的な内部を持たぬ最後の人間として、歴史に登場してきた労働者階級にマ
ルクスは驚嘆する。

 「世界事象に驚嘆する能力こそは、
 その事象の意味を問うことを可能とする前提条件である」   マックス・ウェーバー

 内部をもたぬ最後の人間が、もしおのれの労働を縛る工場システムと商品・貨幣が流通
する交通関係としての市民社会システム・法制度と国家システム、それらの秘密を知った
のならどうなるだろうか? 内部をもたぬ最後の人間が民族言語の神学から、思考を逆転
させおのれ自身の哲学を探求しようとしたのならどうなるだろうか?

 マルクスは内部をもたぬ最後の人間の革命性におのれの実践的思考を結合させ、商品・
貨幣それら数学が表出する資本主義システムの貌をはぎとり、かくされた秘密をあばき探
求すべく、同時代の世界市場と資本主義の前衛たるロンドンに出発する。

 世界市場を逆手にとり、マルクスは哲学・経済学の民衆的浸透を実現した。おのれが内
部をもたぬ人間として戦略的部品の労働力商品と化し、おのれの肉体的知覚をマシン化す
ることによって機械と格闘し商品を生産する世界市場の前衛の動向に直結する万国の労働
者・被抑圧民族がマルクスを受け入れ理解せんとしたのはなぜか。

 それはマルクスの言説に衝撃を受け、おのれの世界が逆転したからである。もはや昨日
の世界と今日の世界は違う。なにも思考せずなにも探求しなくてもよし、とされていた奴
隷の幸福と別れを告げ、みわたせばただ表層のむきだしの現実世界が言語としておのれの
存在をとりかこんでいる。階級はおのれの出身階級を問うとき、蒼ざめた現実原則に出会
う。眠りから覚めた朝、職場への道で、ふと考える、おれは賃金労働者という労働力を売
り物にする商品である、と。商品とは交換に向けた命がけの飛躍である。資本主義が労働
者に教えるのは幻滅の現実原則であるが、マルクスが労働者に教えたのは生涯にわたる思
想としての登山であった。こうしてイデオロギーは存在となった。

 マルクスは徹底した思考と徹底した分析によって、同時代の表出する具体的現実原則を
再転換するジャーナリストの方法をもって、ドイツ観念哲学批判として、ヘーゲル法哲学
批判、経済哲学手稿、ドイツ・イデオロギー、フェルバッハ・テーゼ。政治革命論であれ
ばパリ・コミューンの動向を分析したフランス革命三部作。経済であればイギリス世界資
本主義の真っ只中で研究した資本論。マルクスの方法はつねに先行し、人間が交通関係の
表層に現実原則化させる出来事を研究し、具体的に哲学の方法でもって体系化する。具体
的な現実から抽象の旅に出て時間を下向して、再度、具体的な現実にまいもどりる。その
現実とは思考され言説となった実践的な現実である。言語によって対象化された現実とは
作業領域としてしか立ち上がらない。ありのままの人間の現実とは液体の時間帯だからで
ある。対象化の方法として弁証法はあった。思考と記述の方法である。




【第1回日本経済新聞小説大賞(2006年度)第1次予選落選】

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ピーター ウィルコックス, Peter Wilcox, Gerry A. Embleton, 斉藤 潤子, G.A. エンブルトン
ゲルマンとダキアの戦士―ローマと戦った人々
S. フィッシャー=ファビアン, 片岡 哲史
原始ゲルマン民族の謎―「最初のドイツ人」の生と闘い
S.フィッシャー ファビアン, S.Fischer Fabian, 片岡 哲史
ゲルマン民族・二つの魂―「最初のドイツ人」生と闘いのミステリー
植田 重雄
ヨーロッパの心―ゲルマンの民俗とキリスト教
岡 淳
ゴート族―ゲルマン民族大移動の原点 (1979年)
長友 栄三郎
ゲルマンとローマ (1976年)
増田 四郎
ゲルマン民族の国家と経済 (1951年)
生松 敬三
社会思想の歴史―ヘーゲル・マルクス・ウェーバー
良知 力
ヘーゲル左派と初期マルクス
長谷川 宏
ヘーゲル『精神現象学』入門
ジョン,3世 ヘーゲル, マーク シンガー, John,3 Hagel, Marc Singer, 小西 龍治
ネットの真価―インフォミディアリが市場を制する
G.W.F. ヘーゲル, G.W.F. Hegel, 長谷川 宏
法哲学講義
良知 力
ヘーゲル左派と初期マルクス
ヘーゲル, Georg Wilhelm Friedrich Hegel, 大北 恭宏
ヘーゲル エンツュクロペディー〈第1篇〉論理科学
マルチン ルター, I.B. プラナイティス, Martin Luther, I.B. Pranitis, 歴史修正研究所
ユダヤ人と彼らの嘘・仮面を剥がされたタルムード
満江 巌
少年少女へのマルチン・ルター物語―生誕500年記念 (1983年)
永田 諒一
宗教改革の真実
菊池 良生
戦うハプスブルク家―近代の序章としての三十年戦争
渡辺 伸
宗教改革と社会
永野 藤夫
宗教改革時代のドイツ演劇〈〔第1〕〉―その史的発展の考察 (1962年)
薩摩 秀登
プラハの異端者たち―中世チェコのフス派にみる宗教改革
永田 諒一
ドイツ近世の社会と教会―宗教改革と信仰派対立の時代
野々瀬 浩司
ドイツ農民戦争と宗教改革―近世スイス史の一断面
中見 利男
アメリカ・ネオコン政権最期の強敵バチカン
ジョン コーンウェル, John Cornwell, 林 陽
バチカン・ミステリー
林 陽
ユダヤ・キリスト教 封印のバチカン文書―西欧文明が抱える巨大矛盾
大澤 武男
ローマ教皇とナチス
N.P. タナー, Norman P. Tanner, 野谷 啓二
教会会議の歴史―ニカイア会議から第2バチカン公会議まで
アウレリオ・アメンドラ, 若桑 みどり, ブルーノ・コンタルディ, 新保 淳乃
サン・ピエトロ―アウレリオ・アメンドラ写真集
太田 龍
ユダヤ バチカンの世界支配戦略―宿敵カトリックを内部から崩壊させ人類家畜化を企む陰の帝国を撃つ!
赤間 剛
バチカンの黙示録犯罪―世界支配への究極戦略を暴く
安藤 英治
マックス・ウェーバー
マックス・ウェーバー, 内田 芳明
古代ユダヤ教
マックス ウェーバー, Max Weber, 尾高 邦雄
職業としての学問
マックス・ウェーバー, 池田 昭
アジア宗教の救済理論―ヒンドゥー教・ジャイナ教・原始仏教
田中 真晴
ウェーバー研究の諸論点―経済学史との関連で
マイケル ポランニー, Michael Polanyi, 高橋 勇夫
暗黙知の次元
ジョン ノイバウアー, John Neubauer, 原 研二
アルス・コンビナトリア―象徴主義と記号論理学
広松 渉
物象化論の構図
宮原 勇
図説・現代哲学で考える「表現・テキスト・解釈」
G.H. フォン・ヴリグト, Georg Henrik von Wriht, 牛尾 光一, 服部 裕幸
論理分析哲学
織田 正吉
ジョークとトリック―頭を柔かくする発想
野本 和幸
フレーゲ入門―生涯と哲学の形成
池田 昌昭
反映と創造
ウィリアム・パウンドストーン, 松浦 俊輔
パラドックス大全
三浦 俊彦
可能世界の哲学―「存在」と「自己」を考える
小野 功生
構造主義
梅津 信幸
「伝わる!」説明術 ちくま新書(551)
ルイ アルチュセール, Louis Althusser, 河野 健二, 西川 長夫, 田村 俶
マルクスのために
尾関 周二
言語的コミュニケーションと労働の弁証法―現代社会と人間の理解のために
浅野 楢英
論証のレトリック―古代ギリシアの言論の技術
牧野 広義
自由のパラドックスと弁証法
米山 優
情報学の基礎―諸科学を再統合する学としての哲学

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