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2006年11月26日 (日)

小説  新昆類  (11) 【第1回日経小説大賞第1次予選落選】

   4  

     ウィルス・イデオロギー               渡辺寛之
     
 平成十二(二〇〇〇)年十二月二十四日~平成十三(二〇〇一)年二月六日にかけて書
く。ウイルス・イデオロギー概念とは、沈黙の兵器である。
 
 
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  ところで精神が、戦争に関する基本的思想のあいだを遍歴して身につけたものは、か
  かる精神のうちに開顕された光明にほかならない。そしてこのことこそ理論が精神に
  寄与するところの利益なのである。理論は、諸般の課題を解決する方式を精神に指示
  することはできない。理論は、精神の行くべき道を、その両側に立て並べた原則によ
  って必然性という狭い一筋だけに制限することはできない。要するに理論の効用は、
  精神を訓練して夥しい対象とこれらの対象相互の関係を徹見させ、そのうえで再び精
  神を行動の領域に送り出すにある。しかしこの場合の行動の領域は、以前よりも一段
  と高次なのである。
  このとき精神は、こうして自然的に得たところの力の大小に応じて、かかる精神的諸
  力を糾合し、真実なものや正しいものを、一個の明白な思想として感得するのである。
  するとこの思想は、あらゆる精神的諸力の与える総体的印象から生じたものであるに
  も拘わらず、思考の産物というよりはむしろ感情の所産であるとさえ思われるほどで
  ある。

  「戦争論 第8 戦争計画」 クラウゼヴィッツ  訳/篠田 英雄  岩波文庫
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 一九九一年に勃発した湾岸戦争は、やはり九十年代の中心軸であろう。その年の八月に
旧ソ連邦においてクーデター、一挙にソ連邦の解体。湾岸戦争の世界的勝利によって、自
信を回復したUSAは、経済戦争へと移行。無知な日本閣僚の言語が集約され、ジャパン
バッシングが展開されたのである。

 数字は臨界点に達すると一挙に転げ落ちる。だが牧歌的な日本語は崩壊をイメージによ
って隠し、幸福な市民生活と城内平和の仮想現実によって意識をみせかけのベールでおお
いつくす。

 通貨「円」は都市をめざましく変貌させサイボーク環境を非連続的に生成させる。労働
し生活する人間の肉体的知覚は全面的であるがゆえに、この数の多元的変貌にレイプされ
無防備で受け入れるのだが、一面的な思考はこの数の闘争 に追いつけない。

 かくして潜在的知覚である肉体的知覚(目の裏・耳の裏・足の裏・ 手の裏・皮膚の裏・
頭の裏)と意識思考との不均衡は拡大し、平衡と安定をめざす人間の動物運動を利用した
メディア機関による架空とカオスのとりこになり、イメージによって操作される奴隷が誕
生するのだが、無防備な国民ほど美しいとは三島由起夫の言葉である。

 日本語による単一言語帝国の内部には、圧倒的な詩人(俳句・短歌の巨大人口)と、圧
倒的な評論家(新聞・雑誌の発行部数・電波メディアを読み見ながら、他人事に評論する
巨大人口)が存在する。

 日本語の感受性は王朝詩人から「よみひとしらず」といった民衆詩人によって、数の形
式に規定する型に圧縮することによって、あたかも自然であるごとく生成してきた。だが
これは、個人による個人のための個人への記号でもあったのである。また、誰でも歌える
この自己感受性の叫びの記号表出は、階層を寓意とするカオスとして自然=生成してきた。
ゆえに主体は隠されあいまいとなる記号へとおさまる。主体の論理構造をかくす記号とし
ての日本語は一音一表記が自立し組み合わせることによって 組織し造形する数のDNA
言語である。またイメージのモンタージュ言語である。非主体として装いながら実は強力
なウィルスがそこには自然生成している。わたしがときあかすウィルス原論の迷宮がここ
にある。

 数の型に圧縮され自然生成してきたモンタージュ言語としての日本語は、数字言語によ
るデジタル回路が表記するコンピュータソフトが自己完結したといえよう。だがこれは他
者を存在認知し、前提として意識する空間の闘争そしてコミュニケーションの道具として
生成しないのであれば、デジタルが内包する自己完結はナルシズムの用具と化す。
 第一自然と人間の関係を変貌させることによって成立するデジタル言語は、脳の知覚と
ダイレクトに結合することにより、ある種の快適さを人間に感受させる。アニメティ空間
の機器はやさしく真綿であなたの首を……

 他者の確認あるいは自己の位置、これら空間の世界意識は闘争がなかったかのように、
「和」によって融合させられる戦略的部品としての日本語は、最終的解決としての数との
和解をめざす。これが情としてのDNAの発生。矛盾・疎外を消却した「和」の感情を国
民の琴線を鳴らす爪として自然生成させる歌の発生、語るべき物語は数の秩序意識によっ
て連結させられ、その浸透のスピードはウィルスの進化として伝染する。微妙な戦略的部
品を連結させ感情を伝導させながら吸入・排出する国民的言語とは印刷機である。

 不均衡衝動のシステムに自然生成する数のDNA言語であり、戦略的部品を連結・連動
させる印刷機としての日本語は、第一自然が崩壊死をとげた九十年代世界システムへの対
応能力を失い絶句する。歌の始原、歌の発生にかかわるエネルギーと語るべき物語を語る
エネルギーこそウィルスである。

 一三四七年九月から十五世紀初頭までに全ヨーロッパは、その人口の四分の一を黒死病
たるペスト・ウィルスの餌食とされた。ヨーロッパ言語はやせた土壌に規定される凶作・
飢餓と格闘し、ペスト・ウィルスと格闘。その動物的闘争はペスト・ウィルスに侵食され
ながら、暗黒の出口を外部・他者に向ける。その当時、世界の中心であった豊かなイスラ
ム世界を敵と設定し、十字軍遠征・レコンキスタ運動を開始する。ヨーロッパの誕生とは
何か。ローマ帝国とヨーロッパが継続していると思い込むのは誤りである。ローマ帝国の
植民地であったヨーロッパは蛮族とローマ帝国市民に蔑視されていた。蛮族こそローマ帝
国軍隊の雇い兵士であり、彼らは戦争の方法のみをローマ帝国から学習した。西ローマ帝
国を滅ぼすまで、ローマはヨーロッパ蛮族の敵であった。かれらは植民地独立をかかげ西
ローマ帝国に勝利したのである。敗北した西ローマ帝国市民は東ローマ帝国である現在の
トルコの首都へと逃亡する。ゆえに現在のイタリアとローマ帝国は遺伝子において継続し
ていない。世界は古代以来、市民か蛮族かに分岐する。市民主義とはギリシア文明以来、
帝国城内のステータスであり市民主義の核こそ帝国主義の秘密である。帝国に所属する人
々こそ市民と呼ばれる。文明とはこうして帝国と市民による興亡史を織りなす。

 ローマの地下洞窟で帝国の奴隷であったヨーロッパがなぜキリストを受け入れたのか。
キリストは倫理革命者として、ただひとりローマ帝国に抗拒した神徒であった。奴隷解放
と植民地解放をかかげヨーロッパは地下洞窟でキリストを受け入れる。ヨーロッパのエネ
ルギーの象徴である十字架にキリストの受難肉体を貼り付けるモンタージュによって、キ
リスト教は誕生した。

 西ローマ帝国に勝利し、市民を東へと追いやり植民地解放をなしとげたヨーロッパ。ロ
ーマは政治軍事統合の首都からキリスト教の帝都となった。ローマ帝国のソフトは投げ捨
てられた。ハードとしての遺跡のみが残る。ローマ帝国に勝利したイデオロギーたるキリ
スト教こそソフトであったが、宗教は文明を勃興できない。次なる外部の敵を発見するま
で長い停滞が続く。

 敵はついに浮上した。イスラムとそのソフトを生成させるユダヤである。イスラム文明
と帝国という他者を発見したとき、壮絶なイデオロギー戦争は、ローマ教皇から全ヨーロ
ーッパに発令された。ヨーロッパ言語のDNA、その自然生成とは何か。

 イスラム・そのソフトとしてのユダヤという他者に対し、壮絶なイデオロギー戦争を仕
掛け、貧困なヨーロッパは、その戦争を通し、これらの他者から実践的に学習した。ヨー
ロッパ言語のDNAとは、方法・思想・イデオロギーを他者から動物的本能と闘争心で学
ぶ。それこそ戦争を通して戦争を学ぶ他者を前提としたところの戦略的体系のDNA言語。
ゆえにそれは空間と他者を前提とした数学と哲学思考の音声言語でなくてはならない。神
と人間の闘争と契約に歌の始源・歌の発生・語るべき物語のエネルギーはあり、外部の空
間と他者が存在しなければヨーロッパDNAは自壊する。





【第1回日本経済新聞小説大賞(2006年度)第1次予選落選】

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戦略論大系〈4〉リデルハート
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戦争と映画―知覚の兵站術
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戦略論大系〈7〉毛沢東
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戦略論大系〈6〉ドゥーエ
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戦略論大系〈3〉モルトケ
川田 忠明, ジャワード・アルアリ
それぞれの「戦争論」―そこにいた人たち-1937・南京-2004・イラク
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都市は戦争できない―現代危機管理論
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八十歳の戦争論
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失敗の本質―日本軍の組織論的研究
山本 七平
日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条
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最終戦争論
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きれいな絵なんかなかった―こどもの日々、戦争の日々
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マンガと「戦争」
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スクリーンの中の戦争
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戦争観なき平和論
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大東亜戦争「敗因」の検証―「帝国海軍善玉論」の虚像
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新戦争論―グローバル時代の組織的暴力
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