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2006年11月24日 (金)

小説  新昆類  (29-2) 【第1回日経小説大賞第1次予選落選】

 十字軍の表層こそは、地中海市場とインド洋市場をイスラムから奪い取ることにあった。
また同期としてキリストの物語をヨーロッパ自己遺伝子と模倣子によって自己完結するた
めには、エレサレムを奪い、ローマ教皇の支配下に置くことが必要であった。しかし、ユ
ーラシア大陸の東方であるアジアから、モンゴル騎馬軍団がすべての都市と文明を草原に
戻すのだ、と、東ヨーロッパに襲いかかり、ローマ教皇に対し、挑戦状をおくりつけた、
教皇はふるえあがり恐怖のどん底にたたき落とされる。恐怖は悪魔を呼びこみ、再度一三
四七年からはじまるペスト・ウィルスはヨーロッパ自己遺伝子と模倣子を壊滅せんと襲い
かかるのである。これが絶望と暗黒のヨーロッパ中世であり、死の舞踏である。

 暗黒と絶望の世紀、ヨーロッパ自己遺伝子はペストウィルスとの死闘を通し、世界の周
辺から中心へと進化をとげる準備をするのである。皮肉にもローマ教皇を恐怖につき落と
したモンゴル軍団は、十字軍の敵であったイスラム軍によってアラブの地に敗北しローマ
の道をあきらめ東ヨーロッパ戦線からも撤退する。しかしロシアはモンゴルの支配化にお
かれた。

 かろうじてヨーロッパ・キリスト教世界は破壊されず死守できた。この暗黒と絶望と無
力に打ちのめされた個人の表層の地獄めぐりを思考する。それがダンテ「神曲」である。
共同体成員はペストウィルスによって次からつぎへと死んでいく、それでも文化を求める
「ボッカチオ」がある。哲学はギリシア哲学を発見し、おそるべき戦闘的個人による思考
の内省が誕生する。内省と退行こそは内部から外部へ出ることを発見し、省察は他者を発
見する。ペストと異端狩の中世の時代、科学者は錬金術の実験を部屋に閉じこもり繰り返
していた。哲学者は部屋に閉じこもり思考していた。詩人は部屋に閉じこもり「神曲」と
いう壮大な物語を書いていた。この閉じこもりこそが世界事象に驚嘆する能力を形成した
のである。神学者も教会の地下室にこもり、それまでの文献をひたすら自動記述していた。
複写である。この人間の手によるコピー聖書が生産され、出回り、やがて教会から聖書を
万民のもとへ奪還せよ、たる宗教改革を準備する。

 この閉じこもりというおそるべき圧縮された思考力と忍耐力こそが、心的エネルギーを
形成し、やがて全世界を植民地にしていく大航海時代を準備したのである。ヨーロッパが
世界システムの地球という円環を建設できたのは、中世というアンダーグランドにおける
自己遺伝子が眠りから覚醒したのである。中世とは夜の四つのひとつは覚醒していよ、と
いうブッタの教えに置換すれば、覚醒した夜と夜の夜その時間帯であった。かくしてヨー
ロッパにとって部屋とは想像力の全世界であり個人の基地となる。人間をどこまでも怜悧
にみすえる悪魔のごとき執念から美術は空間と光たる彩色を発見するリアリズムの誕生で
ある。

 ペストウィルスとモンゴル騎馬軍団によって、ヨーロッパ自己遺伝子と模倣子は自壊す
る、その自壊とは教皇という教条から個人が脱却したことによる、戦闘的個人の誕生であ
る。こうして内部なき人間は世界をわがものとすべく、冒険への海路へと出発した。内面
と対話できる能力こそ実践力と行動力の源となった。

 地球を発見した近代文明はヨーロッパの模倣子となっていく。しかしいまだヨーロッパ
の起源をめぐる論争は皆無である。それは世界植民地によってヨーロッパが富という私的
所有たる内部をもったからであろう。内部をもった人間は文明たる官僚機構によって自己
肯定され、文明の市民となるからである。こうして市民にとってアンダーグランドは軽蔑
の対象となり、近代文明のためにアフリカと南北アメリカ大陸の基層文化は壊滅された。
 二十一世紀初頭の世界とは、文明とアンダーグランドが、同期と競合として展開される
であろう。それゆえに、あたらしい人間像があらわれようとしている。市民へと順応した
プロレタリアートの後に登場するのは、どのような妖怪であろうか?わたしの予測によれ
ば、それは非人間であることに間違いはない。人間は果して類的存在なのか? それとも
部族的存在なのか? それらを模索している同期と競合において、人間型ロボットの商品
化とクローン人間の商品化である。まさに商品としての人間と商品としての国家が混迷す
る世界市場において、近代文明の内部は自壊する。現在とは資本主義以後の資本主義とい
う過度期のヒューマノイド幼年期である。

 モンゴル軍団の襲来は、日本、ベトナム、インドネシアへと押し寄せたのであるが、い
ずれも死守できた。日本では若き北条時宗と鎌倉武士団による死力をつくした、戦争指導
によって、モンゴル軍団の侵略戦争を撃退する。日本文明は鎌倉政権の官僚機構によって
守られたのである。戦争とは官僚機構と官僚機構による相手を壊滅する闘争である。異説
によれば北条政権を転覆しようと戦略を練っていた天皇と藤原貴族一族が、モンゴル帝国
に通じていたとする説がある。それを実証する文献はまだ発見されていない。事実、モン
ゴル来襲の戦後、後醍醐天皇は一挙に鎌倉幕府転覆を全国指令するのである。これに同調
したのが、北条一族と長く先祖以来闘争してきた足利尊氏だった。こうして後醍醐天皇・
足利尊氏連合は鎌倉幕府を打倒し、新田義貞によって鎌倉は炎上した。やがて、モンゴル
軍団を打ち破ったのは、天皇制の神風であったとする神話へと、回収されていった。宮内
庁が私有する美術展をみたとき、わたしは驚嘆した。巨大な、フビライ・ハーンの絵画が
そこにあった。天皇一族の情報部隊は古代から存在していた高度な能力をもっていた、そ
れが国内ばかりでなく海外に通じていてもおかしくはない。

 平家と源氏による内戦はこの天皇情報部隊が起動させ、操作していたのである。ゆえに
源頼朝は天皇に同調した弟である源義経を打ち、京都と離れた鎌倉に幕府を開いたのであ
る。天皇制という自然生成的神話は武士が操作されるばかりで、他者を発見し外部へとで
る回路を閉ざされることを頼朝は平家との内戦で学習した。

 日本におけるむすぼらしくきたならしい内部なき人間の、民衆的出現は平家・源氏とい
う同じ天皇一族から出た武家集団の徹底した内戦からであろう。それは仏教思想にあらわ
れる。思想とは人間とはなにか? 人間はどこからきて、どこへいくのか? それらを根
源的に問う。表層における内部なき人間の実践的思考である。

 それまで日本はありあまる豊かな自然生成の四季に同化する、人間の感情と天皇制神話
に埋もれていた。それらは和歌というきらびやかな情の歌にあらわれる。歌こそは内部あ
る人間の美しき自然感情である。思想とは中国律令制度と漢語文献を、天皇制の動物的本
能である自己遺伝子と模倣子の内部へと囲った王権の国家デザインであり、仏教も王権の
デモントレーション、貴族のシミュレーションにすぎなかった。私的所有という内部ある
人間は、中国・朝鮮という他者と外部の制度をシミュレーションすることをもって列島に
閉じこもり他者との出会いがない自然生成の民衆をぶったたまげさせる。

 こうして民衆は王権国家官僚がつくりあげた文明である国家デザインとシミュレーショ
ンによってだまされる。

 みすぼらしくきたならしい内部なき人間の戦闘部族たる騎馬民族はユーラシア大陸の草
原から朝鮮半島の南端において国家を形成する。いわゆるカヤ文明である。その鉄の鋳造
技術はヨーロッパ十世紀以降の技術水準をもっていた。ここに日本が誕生した。高句麗・
新羅・百済そして南端の騎馬民族国家日本、やがて日本は海を越え九州に上陸する。革命
的な騎馬と鉄武器によって地方土俗王権あるいは共同体を次々と破壊し、九州を制覇し、
瀬戸内海を東へと侵攻を開始する、出雲王権を滅ぼし、ついに大和に西日本を制覇する部
族連合の上にたつ大王を擁立するのである。それが天皇制の起源であり天皇制の故郷は南
朝鮮加羅である。

 この話をわたしは九六年ミラノから帰る飛行機で、隣に座った韓国の若き商社マンに天
皇の系譜を図を書いて説明したら、あまりにも興奮したのか鼻血をだして、ぶったおれて
しまった。よほど衝撃だったのか日本人の戦争責任を回避し、韓国を侵略し暴虐のかぎり
をつくした最大戦争犯罪人天皇ヒロヒトの先祖が韓国南部だなどという詭弁に怒りがこみ
あげてきたのであろう。しかし実際、天皇制伝統文化は百済とか南朝鮮が起源であること
は、すでに歴史家の常識である。天武天皇も南朝鮮の武人であった。

 内部ある人間として地方土俗王権は自然生成的神話をもっていた。その神話を天孫降臨
たる騎馬民族神話に回収し、大王は交戦する者に対しては容赦せず徹底的に破壊するが、
降伏するものには部族連合の構成員として迎える騎馬民族の植民地支配方法をとった。し
かし朝鮮半島における高句麗・百済・新羅の戦争により、南端の日本は百済に回収され、
日本はこの列島の植民地を本国としたのである。

 内部なき人間が他者との激突または囲い込みによって、王権という強力な内部と日本イ
メージを擁立するのは「大化の改新」からである。国家デザイナーとしての藤原一族は、
積極的に中国、朝鮮から学者・技術者・官僚を移住させ、当時の中心であった唐帝国から
制度の体系を導入する。そして国家の消滅をかけた百済・新羅・高句麗の三国戦争によっ
て追われた部族軍団がどしどしと日本に移住してきた。かれらは東国開拓たる国造部とし
て東日本へ集団移住していった。東北蝦夷征伐の根拠地づくりである。朝鮮から移住して
きた軍団部族は蝦夷たる縄文人を大量虐殺しながら東北へと侵攻する。

 殺人集団として戦闘的な関東武士団はこうして形成されていったのである。日本は人殺
し文化といわれているがその起源は先住民族であった縄文人の大量虐殺にある。現在の日
本民族とは、イギリスをアングロサクソンが先住ケルト民族を大量虐殺して奪ったように、
縄文人から日本列島を奪ったきわめて侵略性がたかい民族なのである。日本人が戦争部族
であることは戦国時代をみてもあきらかである。騎馬民族が起源だからである。




【第1回日本経済新聞小説大賞(2006年度)第1次予選落選】

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アミン マアルーフ, Amin Maalouf, 牟田口 義郎, 新川 雅子
アラブが見た十字軍
ジョルジュ・タート, 南条 郁子, 松田 廸子
十字軍―ヨーロッパとイスラム・対立の原点
NHK「文明の道」プロジェクト
NHKスペシャル文明の道〈4〉イスラムと十字軍
佐藤 次高
イスラームの「英雄」サラディン―十字軍と戦った男
テレンス ワイズ, Terence Wise, G.A. Embleton, 桂 令夫, G.A. エンブルトン
十字軍の軍隊
レジーヌ ペルヌー, R´egine Pernoud, 南条 郁子, 池上 俊一
テンプル騎士団の謎
山内 進
十字軍の思想
山内 進
北の十字軍―「ヨーロッパ」の北方拡大
テレンス ワイズ, Terence Wise, Richard Scollins, 稲葉 義明, リチャード スコーリンズ
聖騎士団―その光と影
デヴィッド ニコル, David Nicolle, Angus McBride, 市川 定春, アンガス マックブライド
サラディンとサラセン軍―十字軍の好敵手
マルセル シュウォッブ, Marcel Schwob, 多田 智満子
少年十字軍
見市 雅俊
ロンドン=炎が生んだ世界都市―大火・ペスト・反カソリック
ヒルデ シュメルツァー, Hilde Schm¨olzer, 進藤 美智
ウィーン ペスト年代記
ロッテ イングリッシュ, Lotte Ingrisch, 城田 千鶴子
ペスト記念柱
森 正孝
いま伝えたい細菌戦のはなし―隠された歴史を照らす
ノーマン・F. カンター, Norman F. Cantor, 久保 儀明, 楢崎 靖人
黒死病―疫病の社会史
日本軍による細菌戦の歴史事実を明らかにする会
細菌戦が中国人民にもたらしたもの―1940年の寧波(ニンポウ)
カルロ・M. チポラ, 日野 秀逸
ペストと都市国家―ルネサンスの公衆衛生と医師
ジャック リュフィエ, ジャン=シャルル スールニア, Jacques Ruffi´e, Jean‐Charles Sournia, 仲沢 紀雄
ペストからエイズまで―人間史における疫病
滝上 正
ペスト残影
モニク リュスネ, Monique Lecent, 宮崎 揚弘, 工藤 則光
ペストのフランス史
クラウス ベルクドルト, Klaus Bergdolt, 宮原 啓子, 渡辺 芳子
ヨーロッパの黒死病―大ペストと中世ヨーロッパの終焉
スティーヴン キング, Stephen King, 安野 玲
死の舞踏―ホラー・キングの恐怖読本
ダンテ アリギエーリ, Dante Alighieri, 寿岳 文章
神曲〈1〉地獄篇
ダンテ アリギエーリ, Dante Alighieri, 寿岳 文章
神曲〈3〉天国篇
池上 俊一
魔女と聖女―ヨーロッパ中・近世の女たち
アルフレッド・W・クロスビー, 小沢 千重子
数量化革命
デヴィッド ニコル, David Nicolle, Angus McBride, 桑原 透, アンガス マックブライド
中世フランスの軍隊―1000‐1300 軍事大国の源流
中野 節子
マビノギオン―中世ウェールズ幻想物語集
ノーマン・コーン, 山本 通, Norman Rufus Colin Cohn, Norman Cohn
魔女狩りの社会史―ヨーロッパの内なる悪霊
イアン ヒース, Ian Heath, Angus McBride, 柊 史織, アンガス マックブライド
ビザンティン帝国の軍隊―886‐1118 ローマ帝国の継承者
佐々木 毅
プラトンの呪縛
V.L. ヤーニン, 松木 栄三, 三浦 清美
白樺の手紙を送りました―ロシア中世都市の歴史と日常生活
ピーター・H. ウィルスン, Peter H. Wilson, 山本 文彦
神聖ローマ帝国 1495‐1806
田口 宏雄
武士道の源流・騎馬民族から武士に至る武断の系譜〈下巻〉
留目 和美
騎馬民族のきた道
杉山 正明
モンゴル帝国の興亡〈上〉軍事拡大の時代
杉山 正明
NHKスペシャル 文明の道 第5巻 モンゴル帝国
杉山 正明
モンゴル帝国の興亡〈下〉―世界経営の時代
愛宕 松男, 寺田 隆信
モンゴルと大明帝国
ジャン=ポール ルー, Jean‐Paul Roux, 田辺 希久子, 杉山 正明
チンギスカンとモンゴル帝国
伊藤 敏樹
モンゴル vs.西欧 vs.イスラム 13世紀の世界大戦
杉山 正明
逆説のユーラシア史―モンゴルからのまなざし
木村 毅
蒼きあまたの狼たちよ―物語・モンゴル帝国史
木村 毅
青空の国・モンゴル 「帝国創立」800年を迎える
S.R. ターンブル, S.R. Turrnbull, Angus McBride, 稲葉 義明, アンガス マックブライド
モンゴル軍
江上 波夫
オロン・スム遺跡調査日記
杉山 正明
世界史を変貌させたモンゴル―時代史のデッサン
陳 舜臣, 立間 祥介, 平山 郁夫, 守屋 洋
クローズアップ 中国五千年〈第5巻〉東アジアの盟主から世界帝国へ

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